2020年11月号

「食欲の秋」にふと思った

 食の豊かさには目を見張る。飲食時、若者たちのテーブル上は、大盛りのパレード。彼らの時代と別れて久しい身にはその食欲、うらやましい限りだが、豊食の陰にあるのは大量の廃棄処分と聞く。考え物だ。
 遠い熱帯の国では今日も飢餓が続いている、という。子どもたちの体はやせ細り、目だけが異様にギラついている。何万人、何十万人もの難民がテントを張って生活している場所、原野などは衛生状態も相当ひどいらしい。もち
ろん、1日1食さえままならないようだ。
 豊食から飽食の時代に入って長い日本。確かに、各種の飲食店をはじめ、町の商店街やスーパーには国産品、諸外国からの高価な輸入の食品類も所狭しとばかり山積みされている。これが、経済大国となったこの国の“面目躍如”なのか。
 だが、それらを含め、余ったものの多くは無駄なもの。となると、あとは廃棄。「モノ余り↓廃棄」のサイクルがいつから始まったかは覚えていないが、今は全国民が加担していよう。その分、きっとどこかが貧困になっている。
 昔、コメの入った俵の上に腰を下ろしたところ、大人たちに一喝された。食べ物を残すと、「罰が当たるぞ!」と、叱られたものだった。それにしても、ここ数年来の異常な飲食沙汰。こんな状況が続けば、近い将来、必ず大きなバチに見舞われる。“食欲の秋”にふと思った。  (編集長)