いわき市長・清水敏男氏“震災インタビュー”

■月刊りぃ〜ど 2015年4月号掲載

魅力ある地域づくり推進

 

いわき| 清水市長にインタビュー

 

「当時はすべてが混乱していました。ですから、自分でもすぐに出来ること、地元の仲間と一緒に、連日、ボランティアに徹しました」
 4年前の 3・11 直後を真摯(し)に語る、清水敏男いわき市長(51)、2013年秋の市長選出馬については「宿命」と、強調。就任して以来、この春、2度目の新年度予算を組み、「魅力あふれる地域づくりに努めたい」として陣頭指揮を執っている同市長に、復興に伴う現況、目指すいわきの都市像などについてインタビュー した。

 

進む沿岸部の復旧現場。終日、重機類がうなりを上げている

 

市長選“宿命” だった!

 

 ハード面は安定度増す 賠償金打ち切りに延長要請

 

4年前の「あの日の1日」は

清水 ちょうど県議会が開会中でしたので、福島にいました。閉会後、いわきに戻る途中、車の中で震災に“遭遇”しました。(車の)テレビが、東日本大震災を何度も繰り返して…。そんな状況でしたので、いわきへ戻るまで実に、6時間もかかってしまいました。

被害状況や原発事故などの詳細情報は

清水 ほとんど不明でした。ですから「いわきはどうなっているか?」など、不安にかられていました。

地元に帰った後は

清水 市内はどこも大混乱の状態。当時、私は一県議でしたので、正直、何をしていいかわかりませんでした。ですが、出来ることをやらなければと思い、青年会議所時代の仲間たちと連絡し合い「食」のための温かなうどんを用意して。近くの給食センターから食器を借りては、地区の皆さんに配ったりしていましたね。甘酒なども仲間たちと提供したり。毎日毎日、一ボランティアに徹していました。

未曽有の大惨事でしたが、これが市長選出馬へのきっかけ?

清水 この震災によって、ふるさといわきの惨状、その後の疲弊を目の当たりにしました。そうした混乱の日々の中にあって、「ふるさとの復興は、自分に与えられた『宿命』ではないか」と思い、市長選に名乗りを上げました。

就任して1年半余。いわきの「復興状況」はどうでしょう

清水 復興に関しては津波被害の関連事業を最優先で進めてきました。被災地の皆さんの声を聞き、あるいは庁内の話に耳を傾けて。公営住宅も各地に完成してきましたし、一定の安定度は増してきたと思っています。

ハード面は順調のようですが、ソフト面については

清水 市民の皆さんの話をよくよく聞き、寄り添うことが大事と思っています。地域に明るさを取り戻すため、文芸術などの復興、そして各種のイベントなども行いいわきからの発信力を高めていきたいと考えています。

東電では、商工業者などへの営業損害賠償を来年2月で打ち切りの素案を打ち出していますが

清水 どこもあれだけ大きな被害を受けたため、売り上げが下がり、その分、賠償金でやりくりしている業者の皆さんは多い。市内にたくさんありますよ。このため、県や商工団体などは延長など要望を申し入れていますが、市としても単独で国や東電に延長を要請しました。この2月に、東電の本社、国に出向き、訴えてきました。

 

“心の復興に尽力する 避難者とは共存・共栄を

 

今春、2度目の新年度予算を組まれました。その中で、基本的な市の方針は

清水 27年度は市復興ビジョンに掲げる復興期の最終年。各種の事業を確実に推進しつつ、「ふるさといわきの力強い復興と再生の実現」に全力で取り組みます。と、同時に、芸術、スポーツなどを通じ、市民の皆さんの「心の復興」にも努めていきたいと思っています。

事故を起こした第一原発の廃炉、汚染土処理に伴う中間貯蔵施設問題などについては

清水 国、東電に対して第二原発の廃炉方針の決定はもとより、第一原発においては慎重かっ確実な廃炉・汚染対策を実施すること。市民への説明責任を果たすようなど、あらゆる機会をとらえて申し入れています。これらに関連して、今年の4月には独立行政法人の日本原子力研究開発機構(JAEA)福島研究開発部門の事務機能が市内に移転しました。市としては、こうした機構と連携し、浜通り地域全体の「ゲートウェイ(出入り口)」の役割を図っていきたいと考えています。また、除染で発生した除去土壌を一日も早く「中間貯蔵施設」へ搬出して市民の不安払しよくにつないでもらいた併せて、輸送を行う国に対しては、いわきを通過する車両の円滑・安全な運行を要請していきます。

 

漁業関係者からの話に耳を傾ける清水市長と安倍総理大臣(中央)ら=いわき・ら・ら・ミュウ(昨年 3 月)

 

原発地域からの避難者については

清水 双葉郡からいわきへの避難者は現在、24,000人。気候や風土が慣れ親しんだ場所への避難は、心情的に大いに理解できます。「困った時はお互いさま」であり、可能な限り支援をしたい。例えば、避難者といわき市民との「日常的生活レベルでの交流」をより一層進める。これらによって、一緒に地域を支えていく機運を醸成し、共存・共栄をにつなげていきたいと思っています。

最後になりますが、いわき市の将来への「新都市ビジョン」(地方再生への取り組み)は

清水 国の「まち・ひと・しごと再生法」では、市町村でも総合戦略の策定が義務付けられています。市としては具体的なプロジェクトの立案・調整のため、この4月1日に、行政経営部内に「地方創生課」を新設しました。今後はこの課を中心に、全庁一丸となって取り組むことになります。「魅力あふれる地域づくり」を推進し、「元気ないわき市」の創造を目指していきたいと考えています。

 

いわき市の被害関連

 4 年前の東日本大震災によって、い わき市内では、沿岸部を中心に大きな 被害を受けた。
 市の災害対策本部によると、今年の 2 月末現在、人的被害は死亡犠牲者が 460 人。内訳は、直接死が 293 人、関 連死が 130 人、死亡認定を受けた行方 不明者が 37 人だった。建物の被害は、 計 90,542 棟。このうち、全壊が7,917 棟、 大規模半壊が 7,280 棟など。
 被災者の一部は、公営住宅への入居 を済ませているものの、まだ民間借り 上げ、雇用促進団地など、賃貸住宅で 生活を強いられている人も多く、1,535 世帯・4,113 人に上っている。また、 いわき市民で、住民票を異動しないで 市外に避難している人は 1,522 人、住 民票を異動して市外へ避難している人 は 2,631 人。
 双葉郡 8 町村などからいわき市内に 避難している人は、24,150 人。