2021年1月号

重みある骨董類にぜひ

 

 刀剣や陶器などの骨董(こっとう)・古美術類を見るのが好きだ。求めることはあまりないが、関連の展覧会場などへよく出かけ、美と歴史の重さを感じている。比して現代。社会が浮薄なためか、そうした作品への市民の反応が鈍い気がしてならない。1人合点か。

 作秋、市勿来関文学歴史館での「いわきの刀剣展」を見た。展示されていた作品は、県や市指定の計七振りだったか。中には脇差(わきざし)、短刀も。制作年代は鎌倉、江戸、明治の3時代。それぞれに銘が刻まれていた。刀剣は独特の美と怜悧(れいり)さをも保ち、さすが芸術品の最高峰と感じ入った。

 もっとも、刀剣ばかりでなく、国内には先人たちの労苦の一級品などが数多く存在する。身近な生活用品の陶器類などもその一つ。展覧会場などで作品類をじっくりながめると、心がふんわり癒やされてくるから不思議だ。

 それら一連の作品は、今も後継者たちによって世に送り出されている。繊細・精緻を得意とするこの国ならではの逸品。だが、「軽量・増産先行」の今、残念ながら美や芸術に対する篤(あつ)い感情、思いは薄れるばかり。寂しい限りだ。

 自分が“骨董の域”に入ったからではないが、昔から骨董品には興味があった。少しは求めたものの、10年前の津波ですべて流失。しかし、心には残っている。昨年はコロナ禍で誰も心身を病んだ。新年は重みある作品類に触れてはどうか。きっと熱い何かが伝わってくる。  (編集長)