2021年4月号

あと半年、市長選に思う

 

 今秋のいわき市長選挙まであと半年になった。すでに出馬を表明、あるいは考慮中を含めると5人以上か。災害続き、コロナ禍で満身創痍(そうい)の市内一円、閉塞(へいそく)感が漂う。こんな折だけに、よほど肝の据わった人材でないと舵取(かじと)りは難しいと思うが…。

 いわきの市長選で思い出すのは、3期・12年にわたり市長の任にあった奄美大島出身、革新派の田畑金光さん。福島県議、参議院議員、衆議院議員を経て、市長選に打って出た。保革一騎打ち。大激戦の末、1974年秋、2代目市長に就任した。

 だが、当時は、市が誕生して間もない“擾乱(じょうらん)時代”。合併の弊害、地域エゴが頻発、保守主導の県との折り合いも芳しくなかった。こうした逆風吹き荒れる中、田畑さんは先を見据え、市の基盤づくりに励む。

 美術館の建設など、「箱物市長」と揶揄(やゆ)されながら自ら信ずる文化の道も拓(ひら)いた。地方自治体の首長にとって最も大切なものは、先見性と確固とした決断力。“玉石混交”も見えなくもない今回の市長選、不安がよぎる。杞憂(きゆう)ならいいのだが。

 新聞記者と市長。最初は仕事がらみだったが、退任後も年に数回、食事などを続けた。「わしはまだ勉強が足らん」が東大出の元市長の口癖(くちぐせ)で、当方、ひたすら汗顔。2013(平成25)年4月22日、死去。いわきの“中興の祖”は、享年99歳の大往生だった。   (編集長)