2021年6月号

混迷の中、ヒヨコは清涼剤

 

 午後の2時半を回ると、窓の外が急に、にぎやかになる。真新しいランドセルに黄色い帽子、1年生たちの下校時刻だ。収束遠いコロナ禍にブレ続ける政治。杞憂(きゆう)、懸念だらけの社会だが、帰途の“ヒヨコ組”(失礼)の喧騒(けんそう)ぶりを耳にすると、思わず頰(ほお)が緩んでしまう。

 そういえば、あの東日本大震災があった10年前は、今年の小学1年生たちはまだ生まれていなかった。時の流れをついつい感じてしまうが、この彼らにとって今の“閉塞(へいそく)社会”、何ともつまらないものに映っているだろう。

 それにしてもこのコロナ禍、社会に与えている影響はとてつもなく大きい。テレビをはじめとしたマスコミは連日、全国の感染率などの数字を矢継ぎ早に発表、市民の心身の揺れに追い打ちをかける。誰も辟易(へきえき)だ。

 当然、人々の矛先は政府に向かう。「今か今か」の特効薬、ワクチンの接種状況はソロリと緒(ちょ)についた程度。当局側の説明もまちまちで、要領を得ない点も多々。寸秒を争う重症者も少なくない。こんな折の五輪開催、やはり一考ではないか。

 「お帰り〜」。“日課”にもなりつつある学校帰りの邪気ないヒヨコたちの姿に、自然と心が和む。まさに一服の清涼剤だ。昨春以来、コロナウイルス蔓延(まんえん)によって混迷が恒常化した世の中、この子たちのためにも1日も早く開放の社会を取り戻してやりたいと、切に思う。  (編集長)