騎虎の勢いで走ります

 昨年も明るく、楽しく、将来性を含んだキラキラネームの子どもたちが誕生した。老婆心ながら、名前は一生ものだけに難解、あるいは悪字交じりなどとなると子どもは大迷惑。流行便乗もいいが、名づけ側は十分な配慮を。

 古事記や日本書紀、ロシアの小説などをめくると、ストーリーより登場人物の長い片仮名の名前が面白い。だが、読んでいるうちに頭が混乱するのも特徴で、確認のため行きつ戻りつ、ということがたびたびある。作者の明晰さに感心することしきりだ。
 隣国・中国の史書『魏志倭人伝』に登場する、邪馬台国の女王・卑弥呼。この書をまとめたのは、正史『三国志』を記した西晋の歴史家、陳寿。文字がなかった弥生時代の我が国の国情なども併せて綴られている、という。
 彼女の名前の中で気になったのは、「卑」。語源をたどれば誉められた字ではなく、「倭」「邪」も蔑称的との指摘もある。名付け親は不明だが、草場の陰の卑弥呼ら、その意味を知ったら怒髪天だろう。名前は永劫、慎重に。

 早春1月。新年は心が弾むものだが、名前を次々に変え社会への襲来を続ける奴がまだいる。アルファ、ベータ、ガンマ、オミクロンなどなど。長期の居座り、なんとも不遜だが、そこは人間、万物の霊長。勇猛果敢な寅年の虎に似せて、不埒極まるこのコロナウイルス、早く退治したい。本誌は今年も“騎虎の勢い”で走ります。 (編集長)