2022年4月号

あの啄木もきっと仰天?

 すっかり忘れていたメロディーが車のラジオから突如、耳に入ってきた。60年代に流行した「ワーク・ソング」。懐かしく聞き入った。曲の歌詞は別に、汗の勤労はいいことだが、当今発足の「働き方改革」に関しての制度類がどうもおかしい。穿ち過ぎか。

 鎖につながれてひたすら働き続ける囚人たち。アメリカ発の哀歌ワーク・ソングは、後に、“ジャズの労働歌”として多くの演奏家、歌手が取り上げ、世界的なヒットとなった。もちろん、半世紀過ぎた今もスタンダートとして人気を持つ。

 この曲の背景には人種差別という事情があったのかもしれないが、日本でも戦後間もなかった同年代のころは誰もが寸暇を惜しんで働き、体を酷使しつつ、日を送っていた。こうした中で、世界に冠たる今の社会・生活基盤の一端を創り上げた。

 時は移り、先人の労苦を過去の遺産として時代は「労働改革」を“招請”した。当局などの意図、わからないわけではないが、腑に落ちない点は多い。労働者に対する手厚い保護・政策、権利…。その結果、従来以上、労使間に軋轢や歪みを生んでしまったように思えてならない。

 「はたらけど はたらけど…ぢっと手を見た」のは、一世紀前の歌人、石河啄木。当時の労働事情は詳しくないが、今、彼が生きていたらきっと仰天だろう。何せ、主従逆転?の節もそこかしこにあるのだから。(編集長)