一声運動に、問題あり?

「愛の一声運動」というのがある。お年寄りへの安否を気遣う声もあれば、挨拶代わりもある。いい慣習だが、親、学校の指導で一声に過敏な子どもが多く、一歩間違うと警察沙汰にもなりかねない。社会に臆することなく、伸び伸びと謳歌させたいのだが。

毎日午後3時ごろになると、小学生たちが編集部の下の道路をにぎやかに通ってゆく。お帰りの時間だ。たまに入り口付近で彼らと会えば、必ず「お帰り〜」と声をかける。と、「ただ今〜」と元気にハネ返り、列の前後にいるお目付けの先生も笑顔でペコリ。

こうした子どもたちとの“交流”は楽しいものだが、過日、地元の警察署から突然電話が入り、本誌記者が「事情聴取」を受けた。真面目なこの記者、誌面で利用するため過日、公園で遊ぶ子どもたちに趣旨を説明して撮影の依頼をしたところ、「怪しいお兄さん」に間違われたのだ。

車種もナンバーも子どもたちにキャッチされ、保護者や学校から連絡を受けた同署員が2人で来社。その結果、事情を知った彼らも苦笑い。もちろん事なきを得て“無罪放免”となったのだが、悪しき社会の縮図を垣間見せられた気がした。

子どもたちが犠牲になる事件は数えきれない。憤懣やるかたない事犯も十指で足りない。「人を見たら泥棒と思え」。見ず知らずの他人の一声に疑義を持つのは仕方がないこともある。はてさて、胡乱な時代は続く。 (編集長)