NEW!! 2024年7月号

たかがアイス、されど…

夏の定番菓子、アイスクリームの売れ行きが好調らしい。幼いころ、めったに口にすることが叶わなかった「高級食品」。だが昨今は通年傾向のポジション。このアイスに対し、当時の“トラウマ”が払拭できないのとは別に、食品類の季節感がなくなるご時世。なんとなく寂しい。

子どものころ、猛烈に食べたかったのはアイスのほか、生ハム、ヨーグルトの3品。中でもアイスは年に数回ほど口に出来た覚えはあるものの、普通の家庭にとっては相当の贅沢品だった。
アイスの代用品として夏場に食べていたのは“格下”で、細い棒に当たり外れが付いたアイスキャンディー。値段は1つ10円ぐらいだったか。片や、垂涎のアイスは数倍。家庭の生活状況を考えれば、我慢の日常だった。
そんなアイスの市場規模だが、原材料、物流などの費用が上昇とはいえ、売り上げが堅調という。近年の温暖化、食文化の変化、各メーカーの努力もあって、季節など無関係の体だ。もっとも、アイスばかりではない。「季節の味」は年々薄く、高価になってきた。

旧来の諸事情もあり、アイスへの抵抗感が強い。食後の席などで出るそれは必ず隣席者に回す。しかし、孫たちが夢中で食べている姿を見ると、意地もとろりと溶けそうになる。わが家の冷蔵庫には常に様々なアイス類がぎゅうぎゅう詰めで“鎮座中”。幻とは思うが。 (編集長)