“人の世は、住みにくい”
昨今、「そのひと言」でポストを失う人が多い。冗談めかして放った言葉だったが、受け手にはハラスメントに位置付けられ、社会問題に発展してしまう。窮屈、閉塞感が漂う現今の社会状況が一因かどうかは不明だが、とかく世知辛い。必要なのは、寛容だろうか。
ひとの社会にとって、言葉は大きな「武器」の一つ。通常の会話なら別だが、時には投げかけられて、心臓にグサリと一突きされたようなものもあろう。仲間内、あるいは親しき仲でも一歩間違えば、トラブルを引き起こし、一生の問題にもなる。
例えば、社会的な地位にある人物の場合。マイナス的な言動を放ったとたん、メディアは弁解無用とばかりに取り上げ、煽り続ける。一方的ではないにしても、この追及によって、一線から追い落とされてしまう。もちろん一般も同様。特に昨今は目立つ。
若いころ。仕事で先輩たちからたびたび「愛のムチ」を受けた。その都度、腹の中は煮えくり返っていた。そこで覚えた一つは、「我慢」。悪口雑言は、誰も知っている。が、ついつい口走ってしまうこともある。しかし、「言わぬが花」でも社会は成り立たないのだ。
浜育ちの影響で口の悪さには“定評”があった。友人たちからは指摘を受けることも少なくなかった。反省しきりなのだが、夏目漱石も『草枕』の中で書いていた。「人の世は、住みにくい」と。(編集長)