2021年7月号

欠勤、接待、収賄も茶飯事

 

 面白い本を見つけた。『古代日本の官僚』(虎尾達哉著)という文庫。奈良、平安時代当時の官僚・役人たちの怠惰(たいだ)な勤務実態が赤裸々に書かれているのだ。「今も、昔も…」とは思いたくないものの、読むに従い妙に納得できる部分が多く、驚いた。

 本は、奈良時代を中心に、飛鳥時代後半から平安時代前期(7世紀後半〜9世紀)までの律令(刑法と行政法)国家、つまり「専制君主時代」の官僚・役人たちに焦点を当てた。当然、聖徳太子の「冠位十二階」と、官僚としての心構えを説く「憲法17条」にも触れている。

 二訓の根拠は簡略すると、「官人たちは君主(天皇)を崇(あが)め、仕事に励み、礼を尽くせ」。ところが、“君命”とは裏腹に、重要な儀式への無断欠勤、遅刻、すっぽかしは当たり前。接待、収賄はもちろん、任官時の「代返」も茶飯事だったという。

 さて、現代の官僚・役人は「国民のため公務に精励する」こと。だが、メディアの餌食?となる醜聞は頻繁。売り上げ、倒産も無関係の“日の丸ポスト”下、「閑居して不善を為(な)す」人材は後を絶たず。時を経ても人の本質はさほど変わらないのだろう。 

 役人、国や地方議員も国民の血税が生活の糧。コロナ禍で市民は心身ともに疲弊し、経済も破綻ぎみ。今日を必死に生きる一般の大部分は、どこかの選良たちのように、生あくびを噛(か)み殺している時間はないのだ。   (編集長)