NEW!! 2023年7月号

NEW!! 2023年7月号

戦争は何のため、誰のため?

故父親の第二次大戦出征時の足跡、「兵籍簿」が手に入った。ハタチのころに参陣し、激戦地の南洋諸島を転々、“塗炭の日々”を過ごした。帰還したのは終戦半年後の1月。初めて亡父の体験を知る貴重な資料となったが、当今、世界では大戦序章の空気感が強い。杞憂ならいいが。


12年前の東日本大震災時の大津波によって、自宅が流出。当然、両親の写真や20歳のころの父親の出征時のものも雲散霧消。瓦礫の中からはとても探しようがなく、残ったのは記憶だけ。
本誌で『思い出すことども』を連載した里見脩さんの「宰相の品格」(5月号掲載)の記事が“父親探し”の口火だった。来社した博学のY氏との関連の会話の中、「父親の兵役時を知りたい」と向けたところ、「県庁に兵籍簿があるはず」。
県への手続き後、入隊時から帰国までの詳細な資料が届いた。戦闘場所は南洋トラック諸島。「米軍艦隊からは連日、土砂降りのような艦砲射撃。食べ物はタロ芋だった。多くの戦友が倒れた」。生前の父親の話を思い出す。
 
兵籍簿。こうした資料の存在も知らず、自分の無知、迂闊さには汗顔しきり。父親の口癖は「戦争へは、何のため、誰のため行ったのか、わがんねぇー」。九死に一生を得たものの、心中にあったのは艱難だけか。来月8月は終戦記念日、旧盆もある。墓参には兵籍簿も持って行こうと思っている。   (編集長)