2023年8月号

国、東電、はて本気度は

「朝令暮改」。朝と夕の言動が異なること、あるいは話が転々すること。身近な社会でもないことはないが、民を束ねる一国の政府のものだと、不信が増す。東電の放射性物質を含む処理水問題。この海洋放出案件、漁業者側と議論を尽くしたのだろうか。腑に落ちないことが多い。
世界を震撼させた東日本大震災、東電の原発事故から12年半。月日の流れは早すぎるが、中でも漁業関係者らにとっての復興・復旧はまだ緒にも就いていない。生活基盤、本格操業の「解禁」がまだ見通せていないのだ。
漁業者にとって処理水の海洋放出は、一大問題。風評被害による水産物の買い控え、安全性…。政府は2015年当時、「反対」という漁業関係者の総意に“理解”を示していたが、出来レース的?な事実を巧みに重ね「放出」へまっしぐらだ。
毎朝、漁業者が集まる自宅近くの作業所に顔を出す。その口から常に出るのは、「早く漁に出たい」という海仕事のことであり、「処理水は汚染水」が必ず加わってくる。彼らにとって、最も怖いのは荒れる海より、言葉を翩翻、糊塗させる政府発“虚構の波”ではないか。
政府主導の国策会社となった東電。4月から関係市民への追加賠償金支払いをスタート。ネットなどで告知を行っているが、児戯的ミス頻発中。処理水、賠償の両問題、双方から「本気度」をぜひとも聞いてみたい。   (編集長)