2024年6月号

取捨選択をしっかり

知人から古書類をごっそり頂いた。洋の東西を問わずの全集、単行本も。懐事情を考え、最近は古本屋巡りが常の身には“垂涎”の品々。これらとは別に、安価で求めた書の一文が目に止まった。雑多な現代社会に通ずる〝教訓〟、思わず苦笑いした。
 
東日本大震災から13年余。自宅は津波によって基礎部分だけを残し、すべて雲散霧消。このため、書籍類は破格値?で近辺の古書店、ネットなどから購入中。30余年ほど前に発刊の『耶律楚材』も見つけた。初代皇帝チンギスカンの最側近として仕えた、モンゴル帝国の宰相本。著者は、歴史小説家の陳舜臣。
その一文、「興一利不若除一害」。“名伯楽”、楚材の残した名言の一つ。訳すと、「一事を成すより余計なものを一つやめた方がいい」ということ。確かに、あちこち手を広げると失敗も多い。ならば、物事をしっかり見極めること。今昔変わりはない。
社会はカオス(混沌)状態が続いて長い。こんな状況のためか、人心も右に左への動揺が著しく、常軌を逸した事案も限りない。先走り競争で取捨選択を忘れつつある現代人。二兎も三兎も同時に追い求めては、元も子もなくすだろう。

昨今は、すべてにおいて矢継ぎ早のように“奇手”が生まれ、かつ雨後のタケノコの成長スピードをしのぐ。凡庸の我が身、ついていくのに骨が折れて仕方がない。大変困っている。   (編集長)